2月24日(火):当たり年
夜勤終える。ちょっとハードな内容だった。作業内容が多いうえに新人さんと組んでの仕事だった。相方が新人さんの場合、8割から9割の作業を自分がやるくらいの気持ちで臨まないといけない
そんなわけでクタクタになって勤務を終えた。その後、高槻へ出る予定をしていた。
店を出て、駅に向かうところ、最初の交差点で信号を待っていた。片側二車線ずつ、つまり四車線分の広さの通りだ。向こう側へ渡るために信号が変わるのを待った。
ここからは正確に記しておこう。
信号が赤だったので、僕は待っていた。車が来ないからと信号無視して向こう側へ渡った男性がいた。「ああ、危ないのに」と、僕は心にそう思いながら、見送ったが、彼はそのまま向こう側にたどり着いた。
信号が青になったのを確認して、僕は横断歩道を歩き始める。
その時、突然、自動車が突っ込んできた。向こう側から入ってきて、こちらに折れてきたのだ。減速していないことは自動車のランプが点灯しなかったことから分かる。白い、ハイエースなどの、いわゆるバンの形の車だ。
衝突する。危険を感じた僕は咄嗟に飛びのいた。足が悪いのに、なんとかして飛びのいた。その時、左足の踵の方が何かに当たった。自動車と接触したのだろう。
自動車はそのまま逃走した。向こう岸から入ってきて、右折して、そのまま南下するまで、僕が記憶している限りでは、その運転手は一度も減速していない。
ともかく、信号が青の内に僕は向こう側へ渡る。物凄くアタマに来ている。ハラワタが煮えくり返っている。警察に通報してやろうと思った。ただ、ここは交通量が多く、騒音がひどいので、少し奥の方へ入った。車と接触してから3分くらいのタイムラグがここで生まれた。
左足の踵は、しばらく痺れた感じが残っていた。これは一時間くらい続いただろうと思う。
まず、警察に連絡する。僕は警察署の番号をケータイに入れているのでそこに電話する。事情を説明すると、それは交通事故になるから110番通報をしなさいとのことだった。体の一部でも接触したら交通事故になるのだそうだ。
110番へ通報する。警官を派遣するからその場で待つようにとのことだった。僕は事故現場の交差点で待つことにした。皮肉なことだ、信号無視して渡った男性が無事に渡ることができて、信号を守った僕が交通事故に遭うんだから、そんなことを考えていた。また、先月に続き今月も交通事故に遭遇したことから、さまざまな観念が僕の中で湧き上がっていた。
かなり待ってようやく2名の警察官が来た。彼らに事情を説明するものの、上手く言えない。徹夜仕事の後で疲労しているのと、先月に引き続きふたたび事故に遭ったという衝撃と、そのことから生まれる「死の観念」とに苛まれて、とにかくアタマが働かなかった。
僕自身は怪我がないので流しても良かったのだけど、運転手がそのまま逃走したってところが許せなかった。下手をすれば轢き逃げだ。前の事故では運転主が姿を見せただけマシだった。なんとしても、そのまま逃がすわけにはいかん、っていうくらい強い気持ちが生まれ、それを抑制しようともしていた。
その後、さらに事故課の人たちが来て、現場検証などを行う。接触したという僕の靴からも事故の痕跡を見つけ出そうと骨を折ってくれた。どうやらこの辺りの場所は映像が得られないらしい。そうだとしたら、どうかしている。これだけ交通量の多い車道でカメラが設置されていないというのは。
とにかく、ここで事故があったという記録は残してくれるそうである。もし、運転手が自供してきたら連絡してくれることになっている。僕が思うに、後から「今朝事故を起してしまいました」などと神妙に自白するような運転手ではないだろう。それができる人なら、あそこで逃走などしないはずだ。
ああ、こうして書いているのもしんどくなってくる。
それにしても、先月も自動車と接触したし、今日もそうなった。今のところ、今年に入って月に一度のペースで交通事故に遭っている。しかも、先月は接触こそしなかったけれど、危うく事故にまきこまれるところだったケースもあるので、それを加えれば先月は二回だ。今年は本当に当たり年だ。これまで交通事故にはまったくといっていいほど無縁だった僕がこうも交通事故に遭遇するのだから。きっと来月もどこかで事故に遭いそうな気がしている。助かればいいけれど、そのまま死んでしまうかもしれないな。
なんとなく冗談めかして言っているように聞こえるかと思うけど、そんなことはない。けっこう深刻に僕は考えている。
前回も今回も、運転手に僕が見えていないのであれば、それはそれで問題だ。それは僕の死期が近いことを表わしていると僕は考えている。
一方、前回はまだしも、今回は僕の方は完全に非がないはずである。信号が青に変わるまできちんと待ったのだ。交通ルールをちゃんと守っているのだ。僕が違反して事故に遭ったとすれば、僕自身その非を認めるのにやぶさかではないのだけれど、ルールを守っているのに事故に遭うのだとすれば、どうしてそれを防ぐことができようか。
きっと、そんな運転手は多いだろうと思う。視野が狭い人間が増えているように僕は感じている。これはスマフォなどによる影響だと僕は信じている。狭い範囲の物事しか見えていない人が増えたように思う。そして、事故を起こしてもそのまま逃走する人間も多いだろうと僕は確信している。つまり、逃げてしまえば事故はなかったことにできると考えるわけで、その思考は幼児的な魔術的思考でしかなく、そんな思考様式しか持てない人が多くなっていると僕は感じているわけだ。。
何としても今朝の運転手は捕まえてほしい。被害届を出すわけではないけれど、そんな運転手からは免許を取り上げたらいい。間違っても、逃げ切った者の勝ちという結論には終わってほしくない。でも、その望まない結末になるのだろうな。こんな小さな事故で警察がそこまで本気で調べるとも僕は思わない。
結局、死ぬかと思うほどの精神的衝撃、一時間ほど持続した左踵の痺れ、さらに警察の取り調べで生じた1時間以上の時間的損失、僕の方は甚大な被害である。
本当に、朝からやってられないって気持ちだった。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

