5月2日(土):世の中は面白くなく
少しは世の中のことに目を向けよう。
アメリカによるイラン攻撃は続いている。イラン情勢は膠着ぎみである。当初、トランプは三週間くらいで鎮圧できるというようなことを言っていたように僕は記憶しているのだけれど、蓋を開けてみれば、2か月を過ぎても終結のめどがつかない感じだ。そういうものだ。
僕はカミュの『ペスト』の一節を思い出す。
「戦争が勃発すると、人々はいう。『こいつは長くは続かないだろう、あまりにもばかげたことだから』。そしていかにも、戦争というものは確かにばかげたことであるが、しかしそのことは、そいつが長続きする妨げにはならない。愚行は常にしつこく続けられるものであり、人々もしょっちゅう自分のことばかり考えてさえいなければ、そのことに気がつくはずである」
まことにその通りだという気がする。
この戦争がもたらしたものと言えば、世界規模での石油供給の停滞だけである。日本は8か月分程度の蓄えがあるからといって安心してるけれど、途上国ではけっこう悲惨な状況になっているようである。日本もいずれあのようになるのではないかと僕は危惧する。
タカイチは石油というとガソリンしか思いつかないのかとさえ思ってしまう。税金を投入して、ガソリンの値段をできるだけ平時の価格で維持しようとする。それで従来通りの生活を送れるから安心なさいってなことだろう。
ところが石油は製造にも使われる。こちらの方は早くも石油不足が問題になっているようだ。クライアントに最近中古車を買ったという人がいるんだけれど、車に塗装ができない状態だという。ペンキが製造できないからであるらしい。その他、医療器具などにも支障が現れ始めているとも聞いている。
8か月分の備蓄があるから安泰だなどと考えずに、節約して、必要なところに供給して、全体の経済のバランスを取ることも必要ではなかろうか。ガソリンだけ今まで通りに使っていいですよっていうのは、他の不足を生み出し、経済のバランスを崩すことになると僕は思うのである。それに、石油が次に入ってくるのがいつになることか分からない状況なのだから、備蓄も計画的に使わなければならないと思う。
政府がそのような方針を取るのは、国民の安心のためであろう。備蓄があるから今までとおりに暮らしていいですよと言った方が、石油不足が懸念されるので節約しましょうと言うより、国民は安心するだろう。後者のようなことを言うと、買占めが起きたり、パニックになったりするかもしれないので、そういう事態を回避したい思惑があるのだろう。
しかしながら、買占めやパニックが起きるのは、政府の言明によるというよりも、デマによるところが大きいのだ。これは心理学的にも正しいはず。従って、政府は現状をありのまま国民に伝え、その上でデマの発生を抑制した方が望ましいということになる。
いや、それ以前に間違っているのだ。一方で、従来とは違って石油が入ってこない状況があり、それは連日報道され国民に周知されていることである。他方で、政府は従来通りの生活を送っていいですよと言ってるわけだ。両者は、矛盾を生み出しており、必ず衝突する。このダブルバインド的メッセージを発信し続けることの方が、デマの発生を容易にしてしまうかもしれない。
ともかく、イラン情勢はすでに2か月が経過した。終わりはまだ見えない。
一方、自転車の青切符制度が導入されて1か月が過ぎた。僕自身は自転車に乗らなくなっているけれど、それで何かが変わったという感じはしない。まあ、1か月程度では自転車乗りの意識が変わるには短すぎる。意識が変わるには、そうだな、少なくとも半年や1年はかかるだろうと僕は思う。
それはさておき、自転車とすれ違う時に、僕は反則を計算する。今のところ最高は次の例だ。夜間、二人が並んで自転車を走らせていた。並走してはいけないのである。しかも、歩道を走っており、右側通行していた。夜間なのに無灯火だった。交差点でも一時停止せず、いささか信号無視的なところもあった(つまり、信号が青に変わる前に発進した)。これ、全部で罰金がいくらになるんだろう。青切符切ったったらええのになどと思ってしまう。
この青切符制度導入の契機となったのは、自転車による事故や違反の増加によるものであるらしい。ワイドショーで見た。でも、その統計にはいささか問題がある。
例えば10年前と比較して、自転車による事故や違反が2倍になったとしよう。それだけ見ると事故や違反が増えたという印象を受ける。しかし、そう結論付けるためには他の数字が必要となる。
例えば、10年前と比べて自転車に乗る人が2倍に増えたとしたら、それに伴う事故や違反も2倍の数になるのは当然である。数は増えたように見えるけれど、確率は10年前と同じということになる。
また、自転車乗りの数は変わらないとしても、警察が自転車違反の検挙に10年前の2倍だけ力を入れたとしたら、違反者が2倍の数になるのも当然である。
そうした他の要因を差し引いた上で事故や違反が本当に増えているのかどうかを議論しなければならないわけだ。
でも、実際に自転車事故や違反は増えているのだろう。10年前と人間が変わったからである。心が変わってしまってるのである。自我狭窄を起してる人や転導性の高い人が増えてるような気がする。
何がどう変わったかということをもっと綴るつもりでいたが、書いていて面白くもないし、面倒臭くなってきたので、ここまでにしよう。今日は世の中のことに目を向けようという試みだったけれど、中途半端になった。結論としては、相変わらず今の僕には今の世の中はまるで面白くない、ということだ。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

