4月7日:ミステリバカにクスリなし~『コンピューター404の殺人』 

4月7日(火):ミステリバカにクスリなし~『コンピューター404の殺人』 

 

 エドワード・D・ホックのSFミステリ長編。 

 

 コンピューター検察局の副局長アール・ジャジーンは部下のロジャーズからコンピューターのエラー報告を受ける。それはジェーソン・ブラントが3万6千票を獲得し、スタンレー・アンブローズが4万5千票を獲得して、スタンレーが勝利したという選挙結果だった。 

 コンピューター404は大統領選挙のためのものであり、前回の大統領選から使用されていないものであった。その404のシステムを使って地下選挙を行った者たちがいたのだ。一体、この二人は何者なのか。 

 外部からシステムを使用することができるのか、ジャジーンはコンピューターの開発者であるローレンス・フライデーを訪問するが、その帰途に左頬に入墨のある男に襲われる。それだけでなく、彼の部下であったロジャーズは殺されてしまう。 

 コンピューター検察局のカール・クレイダー局長は、ジャジーンの報告を受けて、ブラントとアンブローズの身元を割り出す。ジェーソン・ブラントは富豪の石油業者であり、スタンレー・アンブローズは金星植民地の元長官で、現在は行方不明であった。 

 一体、彼らは何の目的で選挙を行ったのか。HAND(中性支配に反対する人間同盟)が活動を再開したのか。 

 クレイダーはジェーソン・ブラントに近づくためにブラントの妻マーシャを訪問する。一方、命の助かったジャジーンはスタンレー・アンブローズの愛人ミリーを訪問するが、ジャジーンはそこで再び命を襲われることになる。ここでもジャジーンは救出されるのであるが、彼を助けたのはHANDの副リーダーであるユーラー・フロストだった。ユーラ―はHANDのためにジャジーンに協力を求めたが、ジャジーンは断る。 

 ユーラ―はその後、服役中だったHANDリーダーのグレアム・アックスマンを脱獄させる。HANDもまた政府転覆活動を再開したのだ。 

 

 さて、僕が書くとなんのこっちゃわからんと思われることだろう。要するに、ブラントとアンブローズ率いる「ノヴァ」の活動、それを調査するCIB(コンピューター検察局)、政府転覆を本領とするHANDがそれぞれ三つ巴の争いをするということである。 

 三者それぞれの動きが絡み合って物語がスピーディーに展開していく。読み始めると、興味が尽きず、ついつい本を置くことができなくなるのだが、この事件がどこに発展していくのか、読者の方でもまったく見えない。次に何が起きるのか、この先どうなるのか、その興味が読み手を牽引するわけだ。 

 本作はSFミステリであり、近未来のアメリカが舞台となっている。このSFという要素で好き嫌いが分かれるかもしれない。僕自身は、変な話だけれど、ミステリもSFも好きであるのに、SFミステリというのはどうも苦手である。どっちかにしたらいいじゃないかと思ったりもする。余計な融合のように思えてしまうのだな。 

 ホックは好きなんだけれど、SFミステリってところに引っかかって本書は読まず嫌いになっていた部分があった。しかし、いざ読んでみると、けっこう面白い。そして何よりも、本格ミステリのような謎解きまで用意されており、その手がかりも作中にちゃんと提示されていたりする。読んでいるとSF作品を読んでる感覚に陥ってしまうのだけれど、れっきとした犯人当ての推理小説となっている。 

 

 さて、エドワード・D・ホックはEQMMやAHMMに毎号のように短篇を発表した作家だ。その他の雑誌にも短篇を掲載しまくっており、尚且つ別名で短篇を発表したりもしている。その短篇の数は400篇とか500篇とか言われる。レオポルド警部、サム・ホーソーン、怪盗ニックなど数々のシリーズキャラクターを有し、尚且つ、どの短篇も一定の質を保っているというのだからすごい。 

 本作CIBも一つのシリーズと言える。このシリーズは編集者のハンス・S・サンテッスンの要請によるものであるようだ。第1作『コンピューター検察局』(1971)ではCIBはHANDと戦う内容であるようだ。第2作目が本作(1973)であり、この後第3作目として『The Flankenstein Factory』(1975)が発表されている。それからサンテッスンが亡くなったのだろう。CIBシリーズを要請する人がいなくなったものだから、著者のホックもこのシリーズを手がけることはなくなった。 

 本シリーズはホックもあまり乗り気ではなかったのかもしれない。ホックらしい内容も認められるが、ホックの著作群の中では異色であるかもしれない。 

 

 最後に、僕の唯我独断的読書評であるが、僕は4つ星を進呈しよう。傑作とまでは言わないけれど、それなりに良質のミステリであり、けっこう面白かった。 

 

<テキスト> 

『コンピューター404の殺人』(The Fellowship of The HAND)1973年 

エドワード・D・ホック著 

皆藤幸蔵 訳 

ハヤカワミステリ文庫 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

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