1月16日(金):店員的性格
夜勤明け。終わる間際だった。僕は店内の床清掃をやっていた。バックヤードで早朝勤務のおばさんの声が聞こえる。どうやら僕に腹を立てているらしい。腹を立てるのは勝手だし、いくらでも悪口を言っていただいて構わないのであるが、その声が店内にまで聞こえているってことを忘れてるのはどうしようもない失態だ。
僕の勤めているローソンには幻滅することが多々ある。職業はその人のパーソナリティに影響するもので、現場作業員なら現場作業員らしい性格が、オフィス仕事をしている人にはそれらしい性格が身に着くものである。店員には店員的性格が身につくものだと僕は考えている。
コンビニと言えども接客業である。客商売しているのである。この店のスタッフを見ていると、それって本当に客商売している人の言動か、と訝しむことも稀ではない。経験の短い若い人ならまだしも(でも若い人の方がより身に着く)、経験を積んだ人でもそうなんだからビックリだ。
その早朝勤務者の不満は僕のトイレ掃除にある。確かに急いでやったのでザツだったかもしれない。それに、店のトイレはそれなりにきれいになっていたら良しとしている。朝の時間帯なので、清掃でトイレを塞ぐ時間は短くした方がいい。短時間で清掃して、トイレを空けてあげた方が利用者は助かるというものだ。
いや、これは実際そうだ。僕は他所のコンビニで経験がある。ちょっと催してきたので、トイレを使わせてもらおうと、とあるコンビニに入ったのだ。タイミング悪く、トイレは清掃中だった。僕は清掃が終わるまで待とうと思ったのだけれど、それがなかなか終わらない。なお悪いことに、同じようにトイレ待ちの人が続けて二人現れた。僕を含めて三人がトイレ清掃の終わるのを待っている状態だった。その清掃をしている店員がなんとも急いでいない様子だったのが腹立たしかったのを覚えている。待ってる人がいるんだから急ごうとか、清掃を中断して先に利用してもらおうとか、そんな素振りが一切なかったのである。
僕は見切りを捨てて他へ行くことにした。なんとか駅までガマンして、駅のトイレで用を足した次第である。この経験から、トイレの清掃は時間をかけない方が利用者にはありがたいということを学んだのだ。
以後、僕はそれを実践している。トイレなんていつだれが利用するか分からないものだ。トイレ清掃する時は、「トイレ待ちの人がいる」という気持ちを持つようにしている。男性用と女性用と両方合わせて5分くらいで終えるのが一番だと思う。
僕のやり方はこうだ。まず、便器に洗剤をビシャビシャに吹っ掛ける。それで少し間を置く。その間に洗面台なんかの清掃をする。もし、このタイミングでトイレを使う人が現れたら、便座だけ拭いて使用してもらう。洗剤を振りまいて時間を置くと、あまりゴシゴシとこすらずに済む。汚れがほとんど落ちているので、ささっとこすって、後はぱぱっと拭いて、それで終了だ。その行程を男性用と女性用と2回こなす。この段階で利用者が現れたらそのまま使用してもらう。その後、床を清掃して、備品等の確認をして終了となる。一連の流れの中で、利用者が現れた場合の中断ポイントが二か所あるわけだ。
毎回そうというわけではないけれど、本当に、トイレ掃除を2,3回に分けて実施することがあるのである。清掃中に限ってトイレを使う人が出てくる。あれは不思議だ。僕がトイレ清掃を始めたら急にそういう人が現れるのである。どこかで見てるんじゃないかと思うことさえある。そういう時は客に先にトイレを使ってもらうことにしている。トイレを待たすってのは、待つ方も辛かろうと思うからである。清掃の行程で中断ポイントを設けていると、お互いにとってメリットがあると僕は感じている。
什器のフィルター清掃も僕がやってる。小さなハケで網目にからみついた埃を払う。リーダー格の人は水洗いせよなどと言うのだけど、そこまでやってられない。水洗いしたらしっかり乾かさないと、半渇きとか濡れてる状態で什器に戻すと、水分によって余計に埃がこびりつきそうな気がするのだ。
それにフィルター清掃なんて、フィルターがフィルターとして機能すればいいのであって、美しくする必要もないと僕は考えている。加えて、こういうのは頻度の方が大事だと思っている。一回一回は簡単に済ませても、それをこまめにやるってことの方が大事だと思っているわけだ。僕はフィルターを週に一回は清掃する。いくつかの什器に関しては週に2回実施している。僕としてはそれで十分だと思っているし、そこだけに時間をかけるわけにはいかない。
ちなみに、フィルター清掃にかける時間は15分と決めている。これに2台のエアコンのフィルターが加わる。エアコンのは別計算していて、これに15分近くかかる。合わせて30分といったところだ。一枚一枚水洗いなどしていたら、これの何倍もの時間がかかるだろう。フィルターの清掃でそれだけの時間を費やしてしまうと、その他のことができなくなってしまう。
僕はローソンとセブンと両方経験している。若い頃はファミマでバイトしていたけど、それは古い話なので今は脇へ置いておく。
僕の結論は、面白いのはローソンだけど、仕事がやりやすいのはセブンだ。僕の個人的な見解である。ローソンは作業がやたらと煩雑である。セブンはそれがかなり簡略化されている。つまりセブンの方が効率がいいというわけだ。
実際、僕の体感では、ローソンの8時間勤務より、セブンの5時間勤務の方が、より多くの作業ができたという印象が残っている。現実にどうだったのか比較もできないんだけれど、セブンでは通常の作業にプラスアルファの作業ができた。ローソンは、少なくとも僕の勤めているローソンでは、一定のワークスケジュールをこなしたら後はそれ以上の何かをする時間はない。ルーティーンをこなしたら、それで時間が終了してしまう。それどころかやり残した作業さえも出てくる。
ずいぶん話が脱線したな。仕事をしているとその仕事に特有の傾向が性格として身に着くという話をするつもりだった。トイレ清掃からフィルター清掃へと連想が広がってしまって、本筋が見えなくなってしまった。
客商売をする人は無口なのがよい。下手なことを口にしてしまうより無口でいる方がいい。僕はもともと口数が多い方ではなかったが、店員をやってるとさらにそれが顕著になったようにも思う。人の悪口を言うのも構わないんだけど、それがお客さんに聞こえるかもしれないってことに思い至らないっていうのは、かなり軽率だ。客商売やってるともっと慎重になるもので、慎重になるとより無口になると僕は思うのだが、いかがなものだろうか。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

