7月19日(土):書架より~『心理学入門』(ゴノボリン著)(2)
続きを読んでいこう。
第3部は「人間の認識過程」と題し、以下の6つの章を含む。
「第8章 感覚」
この章では感覚に関する概説がなされる。その定義から始まり、感覚の種類、感覚の弁別と順応、複数の刺激に対する相互作用、さらには感受性へと論述される。
「第9章 知覚」
知覚は感覚よりもより高次な形態である。知覚は能動的過程であり、知覚の選択性、統覚作用、全体性と有意味性などの特性を持つ。さらに目的をもち、計画的、組織的に行われる知覚は観察となる。
その他、知覚には時間知覚と空間知覚がある。また、知覚には法則性があり、それ故に錯覚、錯視が生じる。
感覚も知覚も人格特性と関係する。知識欲に富む人は観察力が優れており、正確に知覚する。ただし個人差はある。
「第10章 記憶」
過去に知覚した事物のイメージは表象と呼ばれる。表象は知覚と似ているが、精彩に欠く。
記憶とは、過去に知覚、経験したものの再生や再認である。記憶過程は銘記に始まる。記銘されたことは把持され、想起される。
記銘と把持並びに忘却との組み合わせで四つのグループが生まれる。
最後に、記憶をよくするための条件が七点挙げられている。
「第11章 思考」
認識の方法には直接的なものと間接的なものとがあるが、間接的なものでは思考が仲介する。思考は、パブロフの言う第二次信号系であり、それは第一次信号系を基礎にしている。人間の思考は社会的性格を帯びている。
人間の思考方法、思考操作には分析と総合、比較、抽象化と具体化、一般化などが挙げられ、思考の形式としては、概念、判断、推理などが挙げられる。
さらには理解すること、問題解決することといった思考の目的が述べられる。思考・知能の人格特性としては、思考の深さと広さ、知能の柔軟性と批判性を挙げるが、知能と知識を同一視してはいけないこと、これらの特性が活動の中で形成されることを述べる。
「第12章 コトバ」
これは言語そのものではなく、言語活動のことである。人間のコトバは第二信号系のものであり、動物の言語は第一信号系のものである。
言語活動の諸種類を述べた後、コトバの性質に注目する。コトバは伝達するだけでなく、伝える相手へ影響を及ぼすものであること。その際に重要なのは伝える側の確信である。また、その人のコトバはその人の人格特性や傾向を表わす。
「第13章 想像」
想像によるイメージは過去体験や過去知覚だけに基づくものではない。それは創造過程である。この創造は、以前に知覚されたものに新たな加工や結合がなされている。
創造的な想像とは新しいイメージの自主的創造である。そうして人間はさまざまな道具や文化を作ってきた。
人格特性との関係について、「意識によって統制された想像は自分を批判的に評価するようにする」という一文はその通りだという気がした。自分を批判的に評価することによって、人間は謙虚になり、自分を鍛えようという気になるということらしいが、頷ける。
以上が第Ⅲ部であるが、内容は多岐にわたる。知覚・感覚から、思考と言語、記憶、想像など認知心理学の領域の事柄をすべて含んでいる。各章、各テーマに人格特性としてそれらが扱われていることが特徴的である。
続く第4部は「人格と活動の情動性-意志的特性」と題され、二つの章、感情と意志の章から成る。
「第14章 感情」
感情に関する諸概念を取り上げる。その表出と生理学的基礎に関する叙述を経て、活動との関係が取り上げられていく。感情の源泉は活動にある。感情の能動性は感情を賦活し、エネルギーを高める。
さらに感情に類縁する現象として、情動や気分、激情や熱情などの現象が述べられる。これらはいささか低次の感情と言えるが、人間にはより高次の感情がある。高次の感情は道徳的あるいは倫理的感情であり、愛国心、義務感、友情、愛情などを含んでいる。個人の人格を特徴づけるのはこうした道徳的感情である。
「第15章 意志」
意志に関する概念を最初に述べる。何かを達成するだけでなく、何かを断念することも意志である。
意志的行為は欲求や感情に基づくものであるが、準備段階と実行段階との二段階をその過程においてみることができ、第二段階のものが、第一段階に引き続いて起こらないならその行為はまだ意志的ではないとする。
人間は意志的行為を行いながら、意志的特質を自らに作り上げていく。活動性と関連するものとしては決断力、勇敢、不屈、自主性などがある。妨害等の克服に関する特質としては、忍耐、自制、堅忍、我慢、規律性、組織性などがある。
意志は教育され、訓練することができる。間断のない体系的な自己修養が必要となる。
第3部は、前述のように認知心理学の領域に属する事柄が述べられている。
第4部は人間の意志的特性を取り上げている。続く第5部では人格の個人的特性を取り上げており、第4部と第5部の内容は第7部の低学年児童の教育のところでも重要なテーマとなっている。言い換えると、教育のもっとも重要な使命は意志的特性と人格的特性の発達である。そう考えても間違っていないと僕は思っている。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

