4月21日:朗らかな気持ちで 

4月21日(月):朗らかな気持ちで 

 

 昨日はほとんど時間がなく、バイトの他は何もできないといった一日だった。たまにそういう日もあるけれど、あんまりいいことではない。一日をもっと有効に使わなければとも思っている。 

 昨晩から今朝にかけてローソンバイトだ。ローソンの仕事はなかなか面白いとも思っている。今朝はセブンによく来てくれていた客が現れた。僕の方が先に気づいていたんだけれど、向こうも覚えていた。人との縁は大事にしよう。 

 

 僕と交代の早朝勤務者はOさんだ。Oさんの方でいろいろあったようだ。客からクレームがあったという。そのクレームの話は後回しにして、Oさんも何かと困ることが多いようだ。彼女はそんな話を僕にしてくれる。僕にはそれが嬉しい。 

 もし、女が男に愚痴をこぼしたら、男はそれを喜ぶべきだ。僕はそう信じている。愚痴をこぼす女を軽蔑するような感じの人もあれば、愚痴そのものを嫌悪する人もある。愚痴に対して即席の解決法を伝えてそれで終わりとする人もある。もったいない話である。 

 女が男に愚痴をこぼす時、女はその男を限りなく信頼しているものだと僕は思う。信用できるから愚痴をこぼしたり、あけすけにモノが言えたりするのだと思う。自分が愚痴をこぼしても、相手から嫌われたり見放されたりしないという安心感がなければできないことだと僕は思う次第である。カウンセリングの場面でもよくそういうのに遭遇するので、僕はこれは確かなことだと確信している。 

 そんなこんなで、今朝はOさんと親しく話もできた。たいへんハッピーな気分で帰宅した。本当はもっとゆっくりOさんとも話をしたいなと思っていて、ちょっと誘おうかと思っていたのだけれど、どうもその機会がなく、持ち越しとなってしまった。まあ、いいのさ、仲良くしていれば機会はいくらでもあるだろう。 

 

 彼女が受けたクレームの件だけれど、男の客で、彼女がお釣りを手渡す時に、お金を上から落としたと言うのだ。それが不愉快だったということなんだろう。そんなことでクレーム入れるなんて、そいつの方がどうかしていると思うのだけれど、それだけではないようだ。この男はずいぶん前の不満を述べている。 

 その不満とはこういうエピソードである。彼がアイスクリームを買おうとしたら、店員が段ボールを置いたために買えなかったというのである。ちょうど冷食の入荷時間だったのだろう。たしかに段ボールを置いたりする。ローソンだけではない、セブンでもそういうやり方だったので、ウチのところだけがそうしているってわけではないのである。それに、そんなの「ちょっとその商品を取りたいんですけど」って店員に言えば済む話である。あるいは、段ボールを勝手に動かしても構わないのである。 

 Oさんの言うところでは、この男は問いかけにも反応しないそうである。袋要りますかとか、ポイントカードお持ちですかなど、店員の方から客に問いかけることがある。この男は無反応なのだという。そこがOさんには気味悪く、あまり接触したくないという気持ちが表に出たようであり、それがお金を落としたという行為に表れたということのようだ。もっとも、彼女自身はお金を落としたなどという自覚はなく、男がそう判断しているに過ぎない。 

 この一連の話を追うと、この男のことは恐れるには足らない。ずいぶん以前の小さな不愉快を自分でもどうすることもできないのだ。加えて、その観念がいつまでもこびりつき、心の中を占め、対処できないでいるようだ。要するに自我が機能しないということだ。問いかけに無反応なのは、その刺激が心内に深く影響しているためであるかもしれない。やはり自我は機能せず、硬直する感じではないかと思う。あるいは外界を遮断しなければならない状態にあるのかもしれない。その遮断は最後まで貫徹できず、彼女がお釣りを渡すところでは遮断が途切れてしまっていたのかもしれない。僕はそう思う。だからこの男、少し反論してやると途端にパニックに陥るような人間じゃないかと思う。ちょっと悪質な表現だけれど、「簡単に壊せる人」である。 

 

 同じスタッフ(クルー)にUさんという婆さんがいる。クルー間でも評判のよくない婆さんだ。OさんもUさんに困らされるという。僕もUさんには困ることが多々あるのだけれど、僕の方はあんまり気にならない。それだけUさんとの接点が少ないからである。でも、Oさんの方はたいへんだ。一緒に勤務する時間も長いし、何かと言われたりやられたりしているようだ。 

 今朝、Oさんの言い違いがあった。彼女は「わたし、Uさんみたいな大人になりたくない」と言ったのだ。すぐに「Uさんみたいなお婆さんになりたくない」と彼女は言い直したのだ。僕と一緒にお喋りしていて、若い気分、子供のような気分になっていたのだろうか。なんとなく、この言い間違いが僕には嬉しかった。 

 それに、OさんはU婆さんのようにはならないよ。僕はそう断言する。U婆さんなんて誰からも好かれないものだ。人から好かれないとさらに性格がひん曲がるというか、それで悪循環が生まれるような気がする。Oさんはそうはならないのだ。少なくともOさんを好いている人間が一人はおるのだから。 

 

 帰宅して、ひと寝入りした。それからこのブログを書いている。朗らかな気持ちになってるのはOさんのおかげかな。今日はなんだか刺々しいことを書く気にはならない。たまにはそういうブログいいだろう。 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー 

 

 

 

 

 

 

 

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