3月14日(金):キネマ館~『七人の無頼漢』
昼間家にいたのをいいことにBSで映画を観る。たまたま西部劇に遭遇した。ランドルフ・スコット主演の『七人の無頼漢』だ。
男性コーラスによる主題歌から始まる。当時の西部劇の主題曲にありがちな音で、時代を感じさせる。
物語は大雨のシーンから始まる。二人の男が洞穴で雨宿りをしている。そこに一人の男がフラリと入ってくる。ベン・ストライド(ランドルフ・スコット)だ。一緒に雨宿りをする。ストライドはシルバースプリングの町で起きた殺人事件の話をする。二人に緊張感が走る。撃ちあいとなり、二人は殺される。どうやら彼らは殺人犯人だったようだ。
なかなかいい始まりである。観客には、彼が何者かは分からないけれど、ある事件を追っていることが示される。
続いて、ストライドはぬかるみに馬車を取られて立往生している夫婦と遭遇する。彼は馬車を引き出すのを手伝う。夫婦は、商用のために東部から来たジョンとアニーだった。ジョンはストライドに同行を求め、ストライドは承諾する。
見ていると、ストライドの方で何か思うところがあるようである。どうもアニーが気になるようである。徐々にストライドのことが観客に明かされていくところが上手いと僕は思った。
旅を続ける彼らだが、ある町に着く。先住民の襲撃を恐れて町人がすべて逃げ出してしまい、無人と化した場だ。一軒の家で夜を過ごすことになる。そこで、何かを狙っているクリードとマスターズの二人が彼らと合流する。
こうして5人の旅が続くのだが、マスターズ(リー・マーヴィン)もアニーに惹かれる。そして、マスターズはストライドがどのような男であるかをアニーの眼前で暴露していく。なかなかの卑劣漢である。
こうしてストライドの過去が明らかにされていく。彼はかつてはシルバースプリングの保安官であり、町の法律であった。その職を追われ、再選されることも叶わなかったのだ。そして、ある強盗事件で彼の妻が犠牲となったのだ。彼は七人から成る強盗犯人グループを追っているのである。冒頭の雨宿りシーンの二人はその一味だったことも明かされる。
クリードとマスターズは強盗団の奪った金を奪取するつもりでいる。ストライドとは共通の敵を有していることになるが、マスターズがアニーの前でストライドの過去を暴露しようとするので、決別することとなる。
クリードとマスターズの二人は、かつての強盗仲間と合流する。この仲間をスチュアート・ホイットマンが演じているようである。こうして強盗団とストライドの決戦が準備され、最後はストライドとマスターズの一騎打ちとなる。
以上がおおまかなストーリー展開である。よく出来た作品だと僕は思う。作品の半分は彼らの旅を描いているのだが、そこに先住民の脅威などを絡ませてサスペンスを高める。基本的に先住民が白人を襲うようなシーンは無い。そこも好感が持てるところだ。
そして、何よりも自然の風景がいい。砂漠あり、平原あり、岩場ありと、雄大な自然が観られるのも、僕にとっては、西部劇の醍醐味の一つだ。
この自然の風景に馬は欠かせない。馬たちもよく演技をするものだ。足を取られながら砂丘を登りつめる馬を見て思わず「カッコいい」などと思ってしまった。
俳優さんにも目を向けよう。
西部劇と言えばジョン・ウエインだが、ランドルフ・スコットも負けてはいない。無骨で男らしいウエインと違って、優男ふうのスコットもそれとは違った魅力を発揮している。そして、本作では彼が飲むのはコーヒーだ。酒を煽るシーンなんて無い。なんとも健全なイメージの主人公である。
ちなみに、マスケン(増淵健)さんは、主人公は左腕を撃たれると指摘するが、本作では足を撃たれる。びっこをひきながら、ライフルを杖としながら敵と戦う主人公の姿に、足の具合の悪い僕はひどく共感してしまった。それだけでランドルフ・スコットのファンになってしまいそうだ。
アニー(ゲイル・ラッセル)はどの辺りからストライドに惹かれるようになったのだろう。彼女は夫のジョンを愛していないわけでもなさそうだが、ジョンは彼女にあれこれと指図する男として描かれている。アニーはそれに従順である。ラストで、彼女は自己決定をする。自分の人生を自分で決定していこうという姿勢が生まれている。これはストライドの影響なのだろう。ジョンと一緒にいる限り、彼女は夫の言いなりの人生を送ることになっていただろうと思う。彼女もまた、西部に来て、フロンティア・スピリットを学んだようである。
最後にこの人、マスターズを演じたリー・マーヴィンだ。スコットとマーヴィン、一目見ただけでどちらが善か悪か丸わかりってくらい分かりやすいキャスティングだ。マーヴィンの悪役ぶりがとかく秀逸で、悪役がマーヴィンじゃなかったら本作は凡庸な西部劇映画で終わっていたかもしれないとさえ僕は思う。
偶然テレビで視聴したのだけれど、いい映画を観ることができて良かった。本作の僕の唯我独断的評価は四つ星だ。普通に面白い映画だ。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)