3月4日(火):雨の日の散歩
昨日、あの後、管理人さんから電話があった。日曜日は通常通りに営業してもいいとのこと。譲歩しなくてよかった。オフィスビルならまだしも、商業ビルで日曜日の昼間に清掃業者を入れるなんて、僕には信じられない。しかも、その間、人の出入りができなくなるって一方的に要請してくるのだからますます信じがたい。客商売やってるところばかりなのに、客を入れるなと求めてくるのだから、あんたがたは一体何様なんだと言いたくなる。
それはさておき、昨日は夜までHPの原稿を書いたりして過ごした。
夜は迷ったのだけれど、結局、いつもの店に顔を出すことにした。寒いのもあってか、客は少なかった。それはそれで静かに飲めるのだからいいのだけれど、せっかく来たんだからもっとたくさんの人と会いたかった。
悪い酒にはならなかったものの、なんだか疲れた。どうも無理して付き合ってしまったようだ。今日の客は、別に嫌いとかいうわけでもないんだけれど、どうもウマが合わない。今一つ、一緒にいても面白くないんだな。彼らが悪いわけではない。僕の方が彼らにうまく適応できていないのだろう。
そうして一夜明けて今日となる。
今日はまず税務署に行こう。確定申告用紙を取りに行こう。以前は自宅に送付されていたのだけれど、最近は送られてこない。確か、昨年も(いや一昨年だったかな)税務署まで足を運んで用紙を取りに行った気がする。
阪急西院駅で下車する。西大路通りを三条通りまで歩く。この辺りもずいぶん変わったな。三条通りに近づくほど、以前の趣が残っている感じがする。変化が激しいのは四条通り周辺だけか。
三条通りに出る。西に歩いていくと右京税務署に出てくるはずだ。この辺りは会社や工場などが多い。それもあってか、昔ながらの景色だ。学生時代はこの辺りもよく散策したものである。
税務署に着く。入口のところに用紙が山積みしてある。いろいろ種類があるな。いつも提出している用紙を取る。
さて、税務署を出る。この後どうしようかと悩む。来た道を引き返してもいいし、少し散歩してから帰るのも良しだ。三条通りをもう少し西に向いて歩く。嵐電に乗って嵐山に出てみるのも一興だとも思ったけど、あいにくの雨なので却下だ。
ブラブラ歩く。西小路通りに出る。あ、この辺り、昔何度も来たな、と思い出して、つい入る。僕が大学生だったころだ。この辺りに何度か足を運んだ飲み屋があったのを思い出した。当然、当時の店はなく、別の店になっていたけれど、場所は覚えていた。
そうして西小路通りを南下する。この辺りの街並みというか景色がいいなあ。なんというか風情があると言うのか、昔ながらのと言うか、僕にとってはどこかノスタルジーを掻き立てられる感じがある。
四条通りまで出て、駅に向かう。一昨年までこの駅から工場まで通っていたのだな。そう思うや、ふと、工場の方まで行ってみようという気になった。駅から、通勤していた通りの道順で歩いてみる。あれは春日通りと言うのかな、そこのローソンで喫煙したものだ。今は灰皿がなくなっているので、当時を再現することもできないけれど、出勤時はいつも緊張していたのを思い出す。当時の緊張が蘇ってくるようだ。
結局、ローソンより先には行かず、駅に引き返す。今日の散歩もここまでとしよう。
駅から自宅へ向かう。少々疲れたのでカフェで一休みする。ここのコーヒーは以前なら250円くらいだったのに、今は380円だ。ずいぶん値上がりしたな。値上がりした分、カフェを堪能してやろうと思う。コーヒーを啜りながら持参してきた本を読む。2時間くらい読んだら380円の元が取れるだろうか、などと考えたりする。
でも、そこまで読むことはできなかった。近くに座っている高齢男性二人組の話し声がでかいのだ。やれ物価が高いだの、やれスマフォはよう使えんだの、そんな話ばかりしている。僕は本に集中したいのに、僕の集中を突破して彼らの声が侵入してくる。ああ、面倒くさい。ある程度まで読んで、後は中止だ。
しかし、あの男性たちも退屈なのだろう。年を取ると好きなことやって生きるという人もある。僕には退屈な生活としか思えない。あの二人組も好きなことやって生きているのだ。友達と会い、カフェで時間を潰し、特に大切というわけでもない話を延々と続ける。強迫的に沈黙を回避したいかの如く、矢継ぎ早に言葉を発し、一つの話題から次の話題へ次々に飛躍しまくる。年を取って、あんな風になるのもイヤなものだと思った。
こうして、雨の中の散歩は終了となった。散歩と言っても、本当は税務署に行く用事があったので、そちらがメインのはずだったのに、いつしか散歩がメインになった観を呈してきたな。それでもいいか、用事ついでの散歩ということにしておこう。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)