12月19日(金):キネマ館~『リバティ・バランスを射った男』
最近は映画を観ることがなくなった。数か月前に家のDVDプレーヤーが故障して、それ以来、映画を観なくなった。DVDプレーヤーを新たに買おうと思っていながら、なかなか買いに行く暇がなく、そのままの状態が続いている。
今日、たまたま家にいて、時間も上手く都合がついたので、BSで『リバティ・バランスを射った男』を見る機会ができた。この映画、昔観たことがあったようななかったようなっていう、うろ覚え状態だったので、今回きちんと観て、うろ覚え状態にケリをつけようと思った。
西部の田舎町シンボーンに汽車が到着する。汽車から降り立ったのは上院議員のランスと妻ハリー。彼らはトムの葬儀のためにやって来た。町の記者たちは議員の訪問を記事にしようと取材を申し込む。彼らの要請に応じたランスは、彼がこの町に来ることになったところから話し始める。以下、過去の物語が綴られる。
弁護士として、新たな可能性を求めていたランスは、法律書をカバンに詰め、西部へと向かっていた。ところが、彼の乗った駅馬車が襲われてしまう。リバティ・バランスの強盗一味にランスは身ぐるみはがされてしまい、大怪我を負う。ランスは牧場主トムに助けられ、ハリーの食堂にて看病され、後にハリーの仕事を手伝うようになる。
ランスはここで弁護士として立身しようとする。彼の望みはリバティ・バランスを逮捕して、法の裁きにゆだねることであった。しかし、町の人々は、保安官でさえ、荒くれ者のリバティ・バランスを恐れている。孤軍奮闘するランスにトムは西部では銃がモノを言うことを教えるが、彼はあくまでも法を信奉する態度を崩さない。
そんな折、リバティ・バランス一味がハリーの食堂に姿を現し、ランスに因縁をふっかける。ランスはついに銃を手にし、練習するようになる。
一方でランスは町で学校を開き、メキシコ人の子供や文盲の町民たちに読み書きと歴史、法の精神を教えていく。準州であった町を州へ昇格するため、議員に立候補する。
ハリーはランスに惹かれていく。二人はやがて愛し合うようになるが、面白くないのはトムであった。トムもまたハリーに惚れていたからである。そして、ついにランスはリバティ・バランスと対決することになる。
僕の解説ではなんのこっちゃ分からんと思われるだろうけれど、実際に映画を観た方が手っ取り早い。なかなかいい作品だと僕は思う。
ランスとリバティとの決着、ハリーを巡る三角関係、ランスの町民たちへの影響並びに州への昇格のための選挙と立候補、さらに西部の正義への東部の正義の浸透、これらを軸に物語が展開するわけだ。
トムを演じるのはジョン・ウエインだ。愛する女の幸せのために身を引く男を見事に演じている。西部の男らしい粗野さを併せ持ち、リバティ・バランスと並ぶ荒くれ者という設定だ。
ランスを演じるのはジェームズ・スチュアート。いかにもインテリっぽい雰囲気があって、ウエインのキャラとは対称的だ。リバティに翻弄される役柄にピッタリな配役という気がしないでもない。
そのリバティ・バランスはリー・マーヴィンが扮している。名悪役の一人だと僕は思っているのだけれど、本作はどこまでもランスをいじめる。
ハリーを演じているのはヴェラ・マイルズである。『サイコ』ではシャワー室で惨殺された女の妹役で出演していたけど、本作では西部劇にてよく見かける、どこか気の強いところのある女主人を演じている。
その他、個性的な町民たちが登場する。ハリーの食堂でツケで食べる小心者の保安官も面白い。町の唯一の新聞社の飲んだくれ編集長をエドモンド・オブライエンが演じているが、ランスとはまた違ったインテリで、リバティにボコボコにされたりしながらも、ランスの選挙に応援する。
トムに忠実に仕えるポンペイを黒人俳優ウディ・ストロードが演じる。この人は存在感があるなと僕は思っている。
チョイ役だけど、リバティの手下の一人はリー・ヴァン・クリーフだった。この映画の3年ほど後に『夕陽のガンマン』でブレイクするのだから、世の中何が起きるか分からないものだ。
ランスが議員に立候補するも、今度はリバティを撃ったことが仇となる。人を殺した人間は議員に相応しくないということだ。断念しようとするランスにトムが真相を告げる。リバティ・バランスを射った男とはトムだったのだ。二人の決闘の際に、陰から撃ったのだった。潔白が証明されたランスは再び議員へ立候補していく。
その夜、へべれけに寄ったトムが家に火をつける。ハリーと結婚した時のために増築中の家だった。ああ、この自暴自棄な感情が痛いほど伝わってくる。愛するハリーの幸せのために自分の愛を断念することを選んだトムの男気もそうであるが、おそらく、ランスに対する友情のような感情もあっただろう。複雑な感情を演じるウエインがいい。
ラストでは、ランス議員に取材した記者たちは、その原稿を破棄する。今さら昔のいきさつを明らかにするよりも、事実は伏せたままにしておいた方がいいと判断したのである。東部へと帰る汽車の中で、ランスは議員を引退してシンボーンにて暮らそうとハリーにもちかける。これはトムへの恩返しなのだろう。トムが愛した女を、トムの暮らした町に、トムの近くに居させてやりたいのだろう。今度はトムのためにランスが手を引くことになると僕は思うので、そのように感じるのだ。
最後に述べたのは僕の解釈に過ぎないのだけれど、監督がジョン・フォードである。この人はとかく「男」を撮るので有名だ。本作でもトムとランスの友情を描いている部分が少なからずあると僕は感じているのだが、解釈しすぎだろうか。
ともかく、本作はいい作品である。唯我独断的評価は4つ星としよう。久しぶりに映画を観たという事情を差し引いても、いい作品だったと感じている。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

